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肺がんの治療

症例報告:藤井

患者:30代男性
西洋医学診断:非小細胞肺癌 Ⅲb期


●経過
X年夏ごろより徐々に咳が出始めたが、病院に行っても原因不明
X年12月大学病院にて検査、肺に腫瘍発見
X+1年1月精査により肺癌(非小細胞)と診断、病期Ⅲb
(肺内リンパ転移、肺内複数個所の腫瘍巣 少量の胸水あり)
X+1年2月化学療法(CDDP+VNR療法)×2クール、放射線療法
X+1年4月 肺内の腫瘍巣および放射線照射部分に炎症あり。(CRP↑WBC↑)

●主訴
咳嗽
時に発作的な連続した乾性咳嗽、ひどいときには横隔膜・腹筋の痙攣や咳嗽失神がおこる。
ひどい発作性の咳嗽は抗がん剤と放射線療法終了後から。

●初回時の所見
顔色赤、微熱あり(発熱の起こる時間や発熱の持続時間などは不規則)
手足の火照り 特に夜間気になる
食欲低下 (抗がん剤投与以来ずっと。 悪心嘔吐なし。頑張って食べれば食べられる)
肩、首、背部などコリ
睡眠困難 (咳嗽により睡眠が中断される 臥位で咳が強くなるので起坐位で入眠)
寝汗あり 日中も少し動くと多汗
便秘 (約3日~4日に1回、腹張なし、兎糞状)
痰ほとんど無し
口唇乾燥、口渇少しあり 冷たい飲み物が欲しくなる
倦怠感 抗がん剤投与以来
舌 舌質紅絳、舌苔少、舌乾燥
脈 数、弦

●薬剤
プレドニン、ガスターD、クラリシッド、コデインリン酸塩散、マグラックス、アドエア500


1回目の治療
咳が激しいために座った姿勢にて施術をおこなう。夜間に咳が多く不眠傾向。痰は無し。
頻発する咳嗽のために首や肩周りなどがひどくコリを感じる。時々弱い頭痛もあり。

【配穴】
曲池 尺沢 孔最 雲門 肩井 太衝 復溜 ?中

初めての鍼灸治療で本人は緊張しているために鍼刺激はごく弱め。肺と大腸に関連する経穴をメインに選び、止咳を試みる。足の厥陰肝経の太衝、足の少陰腎経の復溜を加え、熱の抑制をおこなう。長期にわたるひどい咳嗽による肩背部のコリに対して肩井や雲門を補助的に選んだ。横隔膜が痙攣することがあるそうなので胸の中央の?中にも刺針。施術直後は肩や首がとても楽になったと感想を述べていたが、治療後も咳は出ていた。

2回目の治療
初診から1週間後に来院。
首肩がすこし楽になって「気持ちがだいぶ前向きになった」とのこと。咳は相変わらず激しく出ている。夜間は咳が激しく相変わらず不眠。午後もしくは夜間に発熱することが多くなる。口渇、汗多、便秘、口唇乾燥。食欲はあまりなし。熱に関係する所見が1回目よりもすこし強い。

【配穴】
曲池 合谷 孔最 雲門 肩井 風池 三陰交 太衝 復溜 定喘

施術に対する緊張も前回より軽減して少しリラックスして施術を受けている。鍼の感覚にも少し慣れる。1回目の刺激量よりも少し増やし、少しだけ鍼感をあたえる。また、坐位で背部の施術を行う。施術後には肩首が楽になった、目がすっきりした。という感想を述べて帰宅。

3回目の治療
1週間後に来院。
咳が少し治まって、夜の寝苦しさが軽減している。咳嗽失神や横隔膜の痙攣なども前回治療後から今回までの間は起きていない。肩首が明確に楽になった。夜間は咳が多いが眠れる時が多くなる。物事に集中すると咳が出る。午後もしくは夜間に発熱。口渇、汗多、舌質紅絳、舌苔少、乾燥気味、脈弦数。便通が少し改善。食欲低下でも頑張って食べるように心がけている。

【配穴】
曲池 孔最 肩井 風池 足三里 三陰交 太衝 復溜 定喘  膀胱経ローラー針

すべての経穴に少し鍼感を与える。鍼感にだいぶ慣れる。熱の所見は前回ほどではないことと便通が少し改善気味なので合谷を外して、代わりに消化機能を助けるため足の陽明胃経の足三里を加えた。
膀胱経ローラー針は、(1)引火下降(2)肺熱の発散(3)広範囲に物理刺激を行い肩背部の筋緊張緩和などが目的である。
肩回りの緊張が緩和すると自覚的にだいぶ楽になる様子なので、肩まわりの簡単な体操を教え、咳の激しくない時に実践するように指導。こまめに水分補給をするように指導。

4回目の治療
1週間後に来院。
日によって咳の程度が違い、発作の激しいときはなかなか止まらず。安静時でもたまに出る。夜間の咳嗽発作と発熱はすこし落ち着いている。肩回し体操や自分でツボ押しなどを実践してもらったところ、「体も気持ちもとても楽になった」とのこと。とてもうれしくなり主治医に報告したという。少しずつ外出や散歩などをして体を動かすようにしている。食欲は相変わらずあまりなし、頑張って食べるようにしている。睡眠は日によって程度に差がある。
発熱はすこし落ち着いている。午後、夜間に発熱しない時もある。便秘、口唇乾燥、汗多、口渇。

【配穴】
曲池 合谷 肩井 風池 足三里 三陰交 太衝 太白  膀胱経ローラー針

抗がん剤治療後にずっと悩んでいる食欲不振に対して、足の陽明胃経、足の太陰脾経などのツボを多用して健脾和胃を意識した配穴を試してみる。熱証ではあるが、抗がん剤による消化管障害に足の陽明胃経のお灸治療が効果的な場合が多いので、足三里に5壮だけお灸を試してみた。初めてのお灸に少し緊張していた様子。

5回目の治療
1週間後に来院。
咳の状態は日によって激しい時と小康状態がある。夜間の咳は少なくなり、徐々に寝やすくなっている。電車に乗車しているときも咳の発作が出なくなってきたので乗りやすくなったとのこと。咳嗽失神はずっと起こっていないという。散歩や外出が増える。しばらく休職していたので会社にも行きたいという希望が出てきた。便秘はすこし改善、食欲は前よりも良いがあまり食べたいとは思わない。暑くなってきたせいか、少しだるさがある。発熱はあまりない。咳は減ったものの以前はなかった痰がすこし絡む。痰色やや黄、難出。たまに血痰もある。便秘(やや改善)、舌質紅、舌乾燥、苔黄、汗多口渇、脈弦数。
主治医の診察で肺の炎症(腫瘍によるものか放射線治療後遺症かは不明)がかなり治まっていると診察をされた。

【薬剤】
プレドニン、ガスターD、クラリシッド、コデインリン酸塩散、マグラックス、アドエア500(前回と変わらず)
【配穴】
曲池 合谷 肩井 風池 足三里 三陰交 太白  膀胱経ローラー針

肺の炎症が治まっているともに咳嗽発作も少なくなっているので、前回治療時と全く同じ配穴、取穴順序で脾胃の調整をメインに治療を行った。鍼灸治療にもだいぶ慣れ、表情がかなり明るくなり、治療中もいろいろな雑談をするようになっている。

6回目の治療
週間後に来院。
咳嗽は日に日に少なくなっている。発熱もほぼ感じない。だるさは少しある。肩回りのコリ感も咳が少なくなるにつれてあまり感じなくなった。触ると硬い、喜按。食欲は相変わらず、頑張って食べれば食べられる。暑くなってきたので口当たりの良いものが欲しくなる。睡眠良好。便秘は少し改善。2~3日に1回。治療中の咳嗽もほぼなくなる。舌質紅、脈弦。 会社に出勤することが決定、体を動かすようにしている。

【配穴】
曲池 合谷 雲門 肩井 風池 足三里 太白  膀胱経ローラー針

肩回しや自分でのツボ刺激に加えて大胸筋のストレッチを指導

7回目の治療
2週間後に来院。
「咳がかなり止まった」というものの施術中に3回ほど咳嗽発作があった。咳嗽の持続時間は以前に比べるとかなり短くてせいぜい5~6秒程度。本人は発作としてカウントしていないのかもしれない。発熱や夜間の発作は殆ど無いとのこと。舌質紅(紅絳だった以前よりだいぶ明るくなっている)、便2~3日おき。食欲徐々に戻りつつある。ラーメンなど味の濃いものを食べたくなる時が出てきた。脈弦。

【配穴】
曲池 合谷 雲門 中? 肩井 風池 足三里 上巨虚   膀胱経散鍼

自宅でも胃経、大腸経などのツボに梅花鍼にてセルフケア指導。

8回目の治療
2週間後に来院。
通勤を開始、出社時間を調整してもらいながら半日程出勤。普段は咳の発作も殆どなし、発熱もなし。食欲は普通に戻りつつある。たまにあまり食べたくない時がある程度。倦怠巻すこしあり。会社の仲間と復帰祝いで少しだけお酒を飲んだら咳嗽が起きたが、連続的な発作ではなかった。便2日に1回。便秘は改善。脈弦、舌質紅、口渇。

【配穴】
尺沢 雲門 肩井 風池 足三里 太白 膀胱経散鍼

抗がん剤の副作用とみられる食欲不振や便秘など消化管の障害もあまり見られなくなってきている。倦怠巻は久しぶりに出勤しはじめたので肉体的な疲労もあると思われる。
1か月ごとの医師の診察と2週間に一回の鍼灸治療を継続中。


まとめ
1回目から3回目は咳嗽のコントロールを最重要課題と考えて、肺経の疎通、清熱、理気を意識した配穴を行いました。
4回目からは熱証が軽減し咳嗽も抑えられてきたので、手足陽明経の経穴を主とする胃腸を整える配穴を多くしました。食欲回復で気血の生成、水液の正常な運化をめざし、生気の回復、そして将来的に肺内の痰熱(腫瘍巣)の除去につなげるのが主な目的です。また、癌を患っている患者は食欲がないと不安になる傾向があるため、食欲を取り戻すことは大事な治療であると考えます。
初回来院時にはとても症状が激しく、強い炎症による全身症状も多くみられましたが、鍼灸を始めてからは体調がかなり改善したとのことで本人も担当主治医も鍼灸治療の継続にとても満足されている模様です。




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